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INTERVIEW Vol.8

税理士法人急拡大の秘訣

出演:Lapis Nova代表 梶原さん

はじめに

監査法人でキャリアを積んだ会計士が、スタートアップでの実務経験を経て独立し、税理士法人と株式会社を両輪として事業を拡大しています。大阪を拠点に、会計や税務にとどまらず、IT/DXさらにはAIまでを組み合わせた支援を行っているのが、Lapis Novaの代表である梶原さんです。

立ち上げ当初は4名体制だった組織は、1年足らずで11名へと成長しました。その背景には、明確な意思決定と価値観が存在しています。本記事では、Lapis Novaの事業観、税理士法人化の考え方、独立に伴う葛藤と覚悟、そしてこれからの会計士像について詳しくご紹介します。

紹介のみで成長を続ける組織運営

現在、Lapis Novaに寄せられる新規のご相談は、ほぼすべてが紹介によるものです。積極的な営業活動を行っているわけではなく、既存顧客や弁護士、司法書士といった士業の方々、さらに各種コミュニティでの人脈を通じて、自然と相談が増えていきました。

この背景には、日頃から自身の考え方や事務所の方向性を周囲に丁寧に伝え続けてきた姿勢があります。どのような企業を支援したいのか、どの分野を得意としているのかといった点が共有されているからこそ、「この会社なら安心して紹介できる」と感じていただける関係性が築かれてきました。

紹介を受けて仕事をする以上、期待を裏切らないことが何よりも重要です。一つひとつの業務に誠実に向き合い、確実に成果を出し続けることが、次の信頼とご紹介につながっています。

会計事務所にとどまらない支援領域

Lapis Novaの特徴は、会計や税務といったバックオフィス業務に限定されることなく、企業活動全体の業務プロセスを視野に入れている点にあります。

クラウド会計を導入しただけでは、業務が本質的に効率化されないケースも少なくありません。受注管理や案件管理が従来通りの方法で行われている場合、情報が分断され、経営判断に十分に活かされないことが多く見受けられます。

そこでLapis Novaでは、業務管理ツールやデータベースの導入も含め、会計データの流れそのものを再設計しています。日常業務から会計、経営管理までを一体として設計することで、数字が経営にしっかりと活かされる仕組みを構築しています。

さらに近年は、これらの取り組みにAIの活用を組み合わせています。AIを単なる自動化ツールとして用いるのではなく、業務プロセスの中に自然に組み込むことを重視しています。人が担うべき業務とAIに任せるべき領域を明確にし、企業ごとに最適な形を検討しながら導入しています。

税理士法人化において重要な三つの視点

これから税理士法人化を検討されている方に向けて、梶原氏は特に重要な論点として三つの視点を挙げています。

第一は、金銭面での理解と覚悟です。税理士法人化を行うと、多くの場合、短期的な手取り収入は個人事業主時代よりも減少します。役員報酬は定期同額で設定する必要があり、売上がそのまま個人の収入になるわけではありません。この構造を正しく理解し、将来の成長のための先行投資であると納得できるかどうかが極めて重要です。純粋に個人として最大限の収入を得ることを目的とする場合、法人化が必須であるとは限りません。

第二は、人間関係です。税理士法人は共同経営が前提となるため、パートナーとの関係構築が非常に重要になります。考え方の違いや意見の衝突は避けられませんが、それらに誠実に向き合い、対話を重ねて合意形成を図れるかどうかが、組織の安定と持続性を大きく左右します。

第三は、Mission・Vision・Valueの言語化です。組織が小規模なうちは暗黙の了解で成り立っていたことも、人が増えるにつれて通用しなくなります。判断や行動の拠り所となる価値基準を明確にし、迷った際に立ち返れる軸を持つことは、長期的な組織運営において欠かせません。

AIを活用した価値観の整理

こうした価値観や方針の言語化において、梶原氏はAIを対話の相手として活用しています。文章を一方的に生成させるのではなく、問いを投げかけてもらい、それに対して自分の考えを言葉にし続けることで、自身の価値観を整理しています。

このプロセスを通じて明確になった考え方は、経営判断、採用、評価、さらには顧客とのコミュニケーションに至るまで、一貫性をもたらしています。AIは思考を代替する存在ではなく、思考を深めるための有効な支援ツールとして機能しています。

独立という選択がもたらす自由と責任

独立の最大の魅力は、意思決定の自由にあります。働く場所や時間、共に働く仲間や顧客を自ら選択できる点は、大きな価値です。

一方で、その自由は常に責任と隣り合わせです。仕事の継続性や収益の安定、組織を維持するための判断など、明確な正解のない問いに向き合い続ける必要があります。組織が成長すれば、仲間の生活を支えるという新たな責任も生じます。

それでもなお、その重さを引き受ける覚悟がある方にとって、独立は非常にやりがいのある選択肢となるでしょう。

独立のタイミングについて

いつ独立すべきかという問いに対し、梶原さんは覚悟が整った時がその時であると考えています。経験や年齢への不安から一歩を踏み出せない方も多いですが、若いからこそ得られる経験や、若さそのものが価値となる場面も確かに存在します。

資格を取得したその先で、どのような人生を歩みたいのか。その問いに真剣に向き合った先に、独立という選択肢が自然と見えてくるのではないでしょうか。

バックオフィス投資が企業の成長を支える

Lapis Novaが目指しているのは、バックオフィスに適切な投資を行う企業こそが、持続的に成長できるという事実を、実例を通じて社会に示すことです。

会計、税務、DX、AIを横断的に組み合わせながら企業の成長を支援するLapis Novaの取り組みは、従来の会計事務所の枠を超えた、新しい専門家のあり方を提示しています。